出産のときの記録

分娩室まで付き添った夫の体験談(中編)【分娩室でもいきみ逃し】

投稿日:2019年2月22日 更新日:

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僕が10時過ぎに病院に着いたちょうどそのとき。
診察をして子宮口が8cmまで開いたので、分娩室へ移動することになった。

奥さんは既にグロッキー状態。
泣きそうな顔をしている。
というか、泣いている。
不安と苦痛とちょっと怒りのような感情がこもった表情。
目線が鋭い。

陣痛の波の合間を狙って、車椅子に乗り込む。
起き上がるのも一苦労。
こういうときも奥さんは律儀にスリッパを履く。
性格が出るなぁ。

車椅子を押してもらって、分娩室へ直行。
明らかに助産師さんの数が増え、動きも慌ただしくなってきた。

僕もそのまま分娩室へ。
夫しか入ることができないので、お義母さんは貴重品を持って家族控室で待機することに。
娘があんなに泣き叫んでるんだから、気が気じゃないだろう。
でも待っててもらうしか仕方ない。

分娩室に入るときは、消毒なり着替えなりするのかと思っていたけど、意外なことにそのまま入室することになった。
スマホもそのまま持ち込みOK。
まぁビデオやカメラで撮影する人も居るくらいだから、電子機器くらいは平気なんだろうか。

モニターの準備や子宮口の様子を確認するため、僕はひとまず仕切りカーテンの外側で待機。
数分待っただけですぐ分娩台の横へ行くことができた。

これが長い戦いの始まり。

僕が病院に着く前から陣痛促進剤の点滴は始まっていて、その効果は絶大。
昨日とは比べものにならないほど強く間隔の短い痛みが奥さんを襲っていた。
これまでの中でマックスの痛みが2〜3分置きに来るような感じ。
しかもその痛みの強さは、回数を重ねるごとに更新されていく。

「七転八倒」とはこういう姿を言うんだろうな、と思った。
なりふり構わず身体をよじりひねり、呻き声と喚き声を叫び続けている。
昨日までは足が丸見えになることに多少の恥じらいを感じていたが、もうそんなこと知ったこっちゃない。
今の奥さんには痛みが少しでもマシになることが唯一にして最大の問題なのだ。
それ以外のことはどうでもいい。
恥も外聞もかなぐり捨てた姿がそこにあった。

「あ゛ぁ〜」
「いだい゛〜」
「も゛うむり〜」
「だれかたすげて〜」
「はや゛くでてきて〜」
「もう゛おなかきって〜」

こんな感じのことをずっと叫び続けていた。

僕はとにかく奥さんの痛みを和らげる役割に徹する。
(というか、それしかできないのだけど)
腰を手で押さえながら、肛門や膣の辺りをテニスボールで押し込む。
痛みが引いたら、分娩室にあったうちわで奥さんを扇ぐ。
その繰り返し。

腰の痛みはだいたい同じ箇所。
骨盤の左側のやや出っ張ったところ。
後で検索してみたら、たぶん「仙腸関節」という箇所だと思う。

(出典:院長のひとり言 産後の骨盤矯正 | 不妊治療|横浜市の妊活専門 鍼灸サロン Tirta | 妊活からマタニティ、産後まで女性のライフサポート

奥さんは左側ばかりだったけど、人によっては右側も痛むんだろうな。
赤ちゃんの位置や姿勢にもよるんだろうか。

それに比べて、肛門や膣の痛みはなかなか位置が定まらない。
そもそも分かりづらい。
昨日の夜中から大人用のおむつを履いているせいもあって、目視ではまず確認できないし、手の感触も当てにならない。
何より、そもそも痛みが発生している位置自体が毎回違うのだ。
それじゃピンポイントで当てようがない。

痛みが発生した位置にテニスボールは一応置いておくのだけど、次の陣痛でそこが痛むという保証はない。
波がくる度に押し込んでみるのだけど、毎回奥さんが手動で微調整する必要がある。

しかも、テニスボールを押し込むという作業は、見た目の地味さからは想像できないくらいしんどいものだった。
まずシンプルに力が要る。
毎回力一杯押し込むので、腕がパンパンになる。
腕の力だけでやっているとすぐに限界が来るので、体重をかけられる角度を探して姿勢を変える必要があるのだ。
分娩台は足を乗せる台がある分だけ縦に長く、その部分が障害となって体重をかけて押し込むことがなかなか難しい。
奥さんの姿勢も常に変わり続けるし。
それにずっと対応するのは地味に大変だった。

また、テニスボールの形状と大きさのせいで、指や手首が痛くなる。
指でつまむようにすると押し込みやすいのだけど、第一関節がどんどん逆方向に反っていく。
すると、指立て伏せでもやってるのかという痛みが指先にジワジワと蓄積してくる。
それを避けようと手の平で押し込もうとすると、今度は手首がおかしな角度になってしまって、これまたジワジワと痛い。
掌底のような感じで手首の付け根で押し込むとそうした痛みはマシになるけど、腕が伸ばしづらくて体重をかけられなくなる。
どうしようもないので、ボールの持ち方を適当に変えながら痛くなる箇所をローテーションするしかなかった。

かなり強い陣痛が来たときは、押し返される力も相当強くなる。
そうなると片手では足りないので両手で押し込むのだけど、腰を押さえることができなくなって八方塞がり。

お腹のいろんな箇所が圧迫されるらしく、「何かが出る!」ということもしきりに言っていた。
実際、おならも何回か出た。
僕はそのときも当然肛門と膣を押さえ込むべく、奥さんに寄りかかるようにしていたので、おならは僕の顔を直撃することになる。

そんなときも奥さんは「あぁー、ごめんねー」と本当に申し訳なさそうな声で謝ってきた。
いやいや、そんなこと気にしてる場合じゃないでしょうが。

奥さんのおならを間近で浴びるなんて、今後死ぬまでないだろうな。
それはそれで、考え方によっては貴重な経験。
奥さんのおならを嗅げるのは夫である僕だけの特権(?)だし。
そう考えてちょっと嬉しくなった僕は変態なんだろうか(笑)

そんな感じのてんやわんやが約2時間続いた。

12時過ぎに主治医の先生の診察。
子宮口の状態を確認したら6cmに戻っていた。
なんということ!

分娩室に来てから奥さんはずっと「いつまで我慢すればいいの?」と訴え続けていた。
「これ以上続けるのは耐えられない」と。
その度に助産師さんは「初産婦だから時間はかかるよ〜」とか「陣痛が来てから6時間くらいは普通にかかるかな〜」ということを言っていた。
それを聞いた奥さんは「もうイヤ〜」と言いながら、何とか気持ちをつないできた。

けれど、このお昼の診察で決定的なことが起こる。

子宮口が戻っていたことを受けて、奥さんが「このまま続けて今日中に終わるんですか?」と質問。
それに対して先生は「今日中に終わらない可能性もある」と回答。
これで奥さんの心が完全に折れた。

今日中に終わらなかった場合、また明日の朝まで痛みに耐えなければならず、さらに翌日には三度目の誘発をすることになるかも知れない。
それは奥さんには耐えられない選択だったんだろう。
残された方法はただ一つ。
帝王切開だけだった。

病院側はなんとか自然分娩で進めたいようだったけど、奥さんの強い要望を受けて、まずは薬の投与を中止することに。
それで、1時間後にもう一度診察をして、お産が進んでいればこのまま継続、進んでいなければ帝王切開に切り替える、という結論になった。

もちろんその診察までの1時間でも痛みはやってくる。
僕は相変わらず腰を手で押さえて、肛門と膣をテニスボールで押し込んでいた。

薬を止めると、やはり陣痛の強さは和らぐし間隔も空いてくる。
これを感じた時点で大体の結論は出ていたのかも知れない。

1時間後の診察の結果、帝王切開に切り替えることになった。
先生や看護師、助産師の人たちが一斉に準備に取り掛かる。
奥さんはやや残念そうな、でもホッとしたような表情だった。

『分娩室まで付き添った夫の体験談(後編)』へ続く→

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